
総評:75点
すごく久々に硬派なSFゲームに出会うことができた。個人的には『シュタインズゲート』以来だ。他のレビューサイトなどでも評判が高いのもまあ頷ける。とあるレビューサイトでは「狂気的な傑作」とまで形容しているほどだ。……だがこれにかんしていえば、「それはさすがに言い過ぎ」というのが本音のところ。というのも、設定に引っ張られてシナリオが重層的な入れ子構造になってしまって内容が複雑化しているのは明らかにマイナスポイントだからだ。とはいえ、総論的には、「SF好きなら買って損はない」。フルプライスなので購入をためらうかもしれないが、少なくとも買って後悔することはないと思う。「75点とかレビューしておいて本当に信用できるのか?」といぶかしむ人もいるだろうが、全体的にみて良くできたゲームだし、誠実なキャラクターばかりなので、シナリオを進めていくたびにキャラクターに好感を持てるという意味では、クリア後に「買って間違いではなかった」と思えるはず。
いいところ
- ビジュアルよし。安易な萌えイラストではないのがGOOD。キャラクターイラストは繊細で柔らかいタッチでありながら、その表情はみな芯が通っている。

- タワーディフェンス型の戦闘システムは比較的ライトな仕様だが、手軽にコンパクトに楽しめるのでよい。そのおかげでテンポよくサクサク進めることができる。いかに時短で戦闘を終わらることができるかを考えて悦に浸る効率厨にはうってつけのゲーム。
- 作中でうすら寒い会話劇がないのも好感がもてる。キャラクターがみんな“真面目”。
- キャラクターそれぞれに個性がある。よくも13人ぶんのシナリオを用意したものである。すごい。キャラクターのパーソナリティを過度にデフォルメ強調してキャラ立ちさせているわけでもない。みなそれぞれが”ありふれた一般人”であるということを意識している。
- ゲームの世界観は1984~5年の日本。SFファンなら誰しも「1984」と聞いてニヤリとするところだろう。ウェルズなどの往年の古典SF作家も出てくる。SFファンやロボットファンのツボをしっかりおさえている。非常に硬派なゲームである。
- 立ち絵に使われるロケーションの数は残念ながらそんなに多くないが、醸し出される80年代の雰囲気がGOOD。
- 『十三機兵防衛圏』の設定には、カルト的人気を誇るロボットアニメ『BIG O』(ビッグオー)に似ているところがあった。ビッグオーのような「箱庭」系の作品が好きな人には楽しめるかもしれない。

ツッコミどころ(ネタバレ注意)
- シナリオはいくつもの時代(正確には複数用意された”舞台”)を行きつ戻りつする。そこに13人のキャラクター視点が加わり、なおかつ時系列もバラバラ。正直いって、初見ではわけがわからない。
- 序盤~中盤までは「続きがどうなるんだ」という積極的な関心が強かったが、中盤以降は、説明過多になりすぎたような気もする。
- この作品は「記憶」がストーリーの核心となる重要な設定なのだが、それを取り巻く諸設定が複雑すぎた。「記憶」に関する話が深くなるにつれて事態の把握がややこしくなり、しばしば「?」状態に。
- まあ、雰囲気でだいたい言いたいことは察することはできたが、設定に頼りすぎたシナリオ展開も中盤以降散見された。とにもかくにも、「記憶のバックアップ」や「記憶の移植」といった設定が諸悪の根源である。これのせいで話がややこしくなってしまっている。さらに、作中に複数存在する世界に「記憶」が絡むせいで、さらに複雑化している。
(おわり)
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