今日の名フレーズ
繰り返すが、エンディングを想定せずに脚本を書き始めてはならない。覚えておかなければならない最も重要なことは、エンディングはオープニングから生まれる、ということである。
(『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』シド・フィールド/訳:安藤紘平・他)
まだやるかい?――この作品の需要は一体どこにあるのか?

漫画:椎橋寛
所収:週刊少年ジャンプ/2019年/第40~44号
最近ずっと記事に取り上げていなかった『神緒ゆいは髪を結い』。失礼を承知で言うと、まともに批評記事として取り上げる内容もなかったのでずっと放置していた。
「デススペルヴァリウス編が終わったら、すぐ打ち切りになるだろう」と予想していたし、この作品の総括的な話はそれからでもいいと考えていた。
……ところがどっこい、最新話(44号)をみる限では、まだ続きそうなノリではないか。
『神緒ゆいは髪を結い』は、わたしの漫画人生のなかでも相当にカオスな作品のひとつだ。もちろん悪い意味で。
ハッキリ言ってしまえば、「そもそも作品として体を成していない」。さいぜん主張していたことだが、この作品は当初からプロットが滅茶苦茶。いったい何を描く物語なのか、「軸」がずっとブレブレの状態で走り続け、あるときはラブコメ、あるときはホラー、またあるときはスケバンバトル漫画へと路線を変えていった。その点では、『タカヤ』の比ではないほどのブッ飛び具合である。
そして今、本作はまた新たな段階を迎えている。それは、【人の心の弱さにつけこんで「蟲」を悪用する】という新展開だ。


この展開、『少女革命ウテナ』の「黒薔薇編」を彷彿とさせる。
もうなにがなにやら……もちろん、【人の心の弱さにつけこんで「蟲」を悪用する】という構成自体は、ひとつの物語構造として成立しているので悪くはない。とてもわかりやすくて、むしろこれまでのお話よりはずっといい。
でも……まだやるの?
いまさらこの作品にどんな需要があるというのだろうか。辛辣な言い方になるが、今更この作品に期待している読者がどこにいるというのだろう。
いい加減、終わらせておくべきではないのか。もっと他の作品を掲載して新陳代謝を促したほうがみんなにとって幸せな結末のような気もするが……。
ここまで延命をさせられているのをみると、『ぬらりひょんの孫』でジャンプに貢献した実績で”温情”をかけられている、なんてゲスの勘繰りをしたくもなる。
『サムライ8八丸伝』も「素直に面白くない」と言いたくなる出来だし、実際、海外の岸本ファンからも非常に芳しくない評価を得ているようだ。それでも『サムライ8八丸伝』は、ある程度は続けなくてはならないだろう。なにしろ、あの『NARUTO』原作者が手掛けた作品だ。早々に打ち切ってしまっては、ジャンプの沽券に関わってしまう。それはおそらく、『神緒ゆいは髪を結い』にも同様の事情が当てはまる。
『神緒ゆいは髪を結い』と『サムライ8八丸伝』は、ジャンプの”大人の事情”が露骨に見え隠れする作品と言えるだろう。
14,5年前のジャンプは、もっと容赦なくベテラン作家の作品も打ち切っていたような気もするが、いまはそうしたシビアさも薄れてきているのかもしれない。
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