【ネタバレ漫画批評】『チェンソーマン』第37~39話【最近のチェンソーマンに思うこと】



今日の名フレーズ

まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。ブラウンがブルーに仕事を教え、こつを伝授し、ブラウンが年老いたとき、ブルーがあとを継いだのだ。物語はそのようにしてはじまる。舞台はニューヨーク、時代は現代、この二点は最後まで変わらない。ブルーは毎日事務所へ行き、デスクの前に坐って、何かが起きるのを待つ。長いあいだ何も起こらない。やがてホワイトという名の男がドアを開けて入ってくる。物語はそのようにしてはじまる。

(『幽霊たち』ポール・オースター/訳:柴田元幸)

 

第36~39話

チェンソーマン 最新話 ネタバレ 感想 批評 評価 マキマ デンジ 映画

作:藤本タツキ

所収:週刊少年ジャンプ /2019/第41~43号

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最近のチェンソーマンに思うこと――いまひとつ盛り上がらない……

 

最近のチェンソーマンに思うことがある。それは、「いまひとつ盛り上がるに欠ける」ということだ。

他の読者が最近のチェンソーマンをどう評しているのかについては、それとして興味があるところではあるが、とりもなおさず、少なくとも自分の中では「盛り上がらねえな」という印象を抱いている。では、なぜ自分は最近のチェンソーマンを”微妙だな” と思うようになったのだろうか?

 

1.盛り上がりそうな演出はするけれど……

 

私見では、「姫野の死」以降、この作品に顕著にみられるようになったひとつの問題点がある。

それは、「”次回は盛り上がりそうな展開だな”と思わせて、実際は”あれ?こんなアッサリでいいの?”」という不完全燃焼な展開である。

 

それはつまり、次のような展開のことである。

①超強い大ベテランのオッサン(岸辺)に、おバカコンビのデンジ&パワーが一矢報いるため「頭を使う」という展開

→結局、次週ではその「頭を使う」展開についてはまったく描写されなかった「先週の前フリは一体何だったの?」と戸惑う。当時のレビューではそれについて軽くツッコム程度で済ませていたが、こうしていま思うと、やはり問題がある。

②オッサン(岸辺)はなかなか魅力的な人物で掘り下げ甲斐があり、デンジ&パワーとの絡みが面白そうだと期待

→デンジ&パワーの”特訓”エピソードがアッサリ終わってしまったため、人間ドラマ的なものはほとんど無いに等しかった。「もう少し掘り下げなくていいの?」と戸惑う。

③銃の悪魔の一派が大量の「ゾンビ」を従えてビルに籠城(?)する展開。見開き一杯にひしめくゾンビ。

→次週、B級映画よろしくのスプラッタ戦闘が予想されたが、ゾンビの相手をパワーにまかせてデンジは違う階へ行ってしまう。そのため、先週の”引きの演出”でゾンビ戦を期待させておいてそれはないんじゃない?」と戸惑う。

④一話丸ごと使って「特異4課」のユニークな面々を紹介する展開

「次回はコイツらが満を持して大暴れでもするのかしらん?」と期待するものの、フタを開けてみれば一度も出番が無いまま「銃の悪魔一派」編が終わる。

 

このように、わたしは最近、展開の仕方に「拍子抜け」させられてしまうことが度々あった。この不完全燃焼感がジワリジワリと蓄積され、結果「最近盛り上がらねえな」という結論に至るのである。連載初期に比べて、盛り上がりそうな”引きの演出”は各段に良くなったのは間違いない。特に、「ホテルの悪魔」編以降、その流れを汲んでいるように思う。

ところが、「次回が気になる」という思わせぶりな演出は、いざフタを開けてみると「……あれ?」という展開が多い。これについては、不満に思うところである。せっかく盛り上がりそうな素材があるのに、ことごとく次週以降の展開で活かされずに終わっている。

 

2.先の展開をあまり深く考えていない?

 

以前のレビューでわたしは、「この作品が行き当たりばったりで描いているのか、それともちゃんと構想を練っているのか」といった話に言及したことがある。最近の『チェンソーマン』を読むかぎり、いまのところは「この作者、行き当たりばったりで描いているのかな」と考えている。そうでなければ、上記に挙げた「拍子抜けの展開」は説明できない。

いや、いいんだけどね別に(本音を言うと良いとは思ってないけど)……。週刊連載漫画には、週刊連載漫画の独特な”技法”があるのは事実だ。ストーリーの構成よりも、”その場のノリ”を重視するやり方は、いまに始まったことではない。それこそ、かの”藤田和日郎”御大が示す通りである。

しかしさすがに、「頭を使って岸辺のオッサンを倒すぜ!」という引きをしておいて、次週で何事もなかったかのように別の話が進むのはいかがなものかとは思うが……。

 

どちらせによ、今後着目すべきは、デンジというキャラクターの行方である。最新号(第43号)では、デンジの「心」がテーマに描かれていた。悪魔(ポチタ)を身体に取り入れて実質人間ではなくなったデンジが、「人間の心」を喪いつつあることが示唆されている。刀のオッサンも、デンジに対して「心がもう人じゃねえんだよ」と言っていたのは記憶に新しい。

果たしてデンジは、自分の心に宿る”人間らしさ”に固執するのか? それとも人ならざる方向に向かっていくのか? これについてどのように描かれていくのかは、気になるポイントだ。さすがに作者も、その辺のところはキチンと描いてくれるはずだ……たぶん

 

(次回に続く……)



2 件のコメント

  • 感想待ってましたー(遅い)。3週間も来ないものだから札幌怪奇譚のように打ち切りかと心配してました…
    チェンソーマン自体が打ち切り漫画のようなスピードで進行していきますよねー。そのぶん拍子抜けというか、待っているものに対してのリターンが少ない状況が続いてますね…
    今週分も1ヶ月分くらいまとめてになるんですかね?気長に待ってますー。

    • ・コメントありがとうございます!いつも読んでくれているようで、とても光栄です。じつは最近、ジャンプ漫画に関しては更新を控えめにしています……。というのも、一話ずつ批評をすることに、やや限界を感じているからです。以前、他の読者から指摘があったように、「単なる感想」になってしまうことがあったからです。なので、ある程度クオリティを保つために、まとめてレビューしていこうかなと考えています。気長に待っていてくれると嬉しいです。

      ・『札幌怪奇譚』はけっして打ち切りではなく、サボっているだけです(笑) 実は『札幌怪奇譚』は、映画監督の友人と映像化をしようかと構想したりして、なにかと水面下で企画は動いているのです。もし機会があればブログで発表することもあるでしょう。

      ・そして、最近の『チェンソーマン』についてですが……。ブログでも言及している通り、ぶっちゃけて言うと作者は「先のことをあまり考えていない」というのが本音のところではないでしょうか。だから、「拍子抜け」の展開がいくつも散見されるようになっている。まるで、延命に次ぐ延命でわけのわからなくなった末期の海外ドラマのようです。「待っているものに対してのリターンが少ない」という表現は、かなり的確ですね。「何かが起こりそうで、フタを開けてみれば特に何も起こっていない」というのが本作品の現状なのではないでしょうか。賢い読者なら、そろそろ「こういう漫画なのね」と察しがついているかと思われます。良くも悪くも、どういうラストを迎えるのかが気になりますね。

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    石山 広尚(いしやま ひろなお) 1991年うまれ。 札幌在住のライター。 一時期は社会学の研究者を志していたが、ひょんなことから友人と同人誌をつくることになり、それがきっかけで「創作」の世界にどっぷりハマる。小説サークルを主宰し、「批評」の重要性を痛感する。 ・大学院時代の専門:思想史と社会学 ・好きな作家:H.G.ウェルズ、オー・ヘンリー、ポール・ギャリコ、スティーブン・キング ・好きな映画:ゴッドファーザー、第三の男、ターミネーター2