【ネタバレ漫画批評】『夜桜さんちの大作戦』第1話【粗悪なコピー品?】

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今日の名フレーズ

「こりゃ、ページ・ワンだ!」、映画会社の企画制作部の重役がよく言う。アイデアや登場人物はいいが、そのほかはどうしようもない脚本を読んだときだ。そのあとどうなるか? どこかのアホ野郎に〈全面的書き換え〉が命じられる。工場に持ち込まれた故障車を修理工が見て、車のオーナーに「こりゃ、お釈迦だね」というのと同じことである。

(『SAVE THE CATの法則』ブレイク・スナイダー/訳:菊池淳子)

第1話「桜の指輪」

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レビュー:40点

権平ひつじ

所収:週刊少年ジャンプ/2019年/第39号

粗悪なコピー品?

 

  • 巷で話題の『SPY×FAMILY』
  • 今回は、そんな”スパイファミリー漫画”人気に便乗した感が満載の新連載が始まった。
  • 身内の人気作品を本誌でコピー……ジャンプ編集部の発想には驚かされる。ぶっちゃけ言うと、読者を舐めているのではないかとすら思う。
  • 妥協と打算の産物……とまでは言うまい。しかし現状、ことごとく新人作家の連載が続かない(育たない)から、身内の人気作品にあやかった連載を決定したのは容易に想像できる。

 

  • こういう事情を深読みすると、作者に罪はないが、すでにこの時点で本作品を読む気が無くなってしまうのが本音である。
  • ともあれ、お金をキッチリ払って本誌を購入している以上、作品を読んで批評する権利はあるだろう。

 

  • どうやら本作品では、「スパイ」という職業は、「公務員スパイ」やら「自営業スパイ」やら、とにかく多様な形態でオープンに存在しているようだ。
  • ……すでに「スパイ」要素が薄れてしまっているのだが、大丈夫だろうか?

 

  • それにくわえ、こうもあけっぴろげにスパイ業が盛んだと、雇い主からすれば「裏切り」のリスクが非常に高まってしまう。自分の雇っているスパイが、自分よりも多額の報酬を出す敵に寝返るかもしれないからだ。実際、国家に忠誠を尽くすCIAKGBですら、裏切りのリスクに頭を悩ませているのが現実だ。
  • にもかかわらず、本作品ではオープンな職業として「スパイ」をパロディ化している。これに対しては、かなりの違和感を覚える。
  • まるで「スパイ」という言葉を借りた別のなにかである。前輪駆動の軽自動車に「4WD」というステッカーを張っているようなものだ

 

  • このように、こうしたツッコミが入り込む余地がある時点で、本作品では、「スパイ」という職業の”本質”を十分に理解できていないことがわかる。
  • 「安月給の公務員スパイ」「自営業スパイ」「アイドルスパイ」「クチコミサイトで星4.8の1位」――こうした設定が次々に飛び出てくる。
  • おそらくこれらの演出は、もともと重いニュアンスを帯びている「スパイ」という職業観を、パロディカルかつコミカルに描写することで作風の雰囲気を軽くしようという意図から施されているのだろう。

 

  • もちろん、パロディが悪いと言いたいわけではない。
  • しかしパロディは、オリジナル(元ネタ)の本質をしっかりと理解していなければまるで意味がないのだ。
  • 「スパイ」はどこまでいっても「スパイ」である。彼らはつねに日陰の存在で、誰にも正体がバレてはならない。それは、めぐりめぐって雇い主の安全を保障するためでもある。
  • たとえば、いつもお腹がゆるくてトイレに駆け込むスパイがいてもいいだろう。どんなことがあってもキッチリ8時間で仕事を切り上げるスパイなんていうのもユニークだ。あるいはまた、あまりにイケメンすぎて周囲から目立ってしまうスパイなんてのも皮肉じみてイイではないか。
  • しかし忘れてはならないのは、どれだけコミカルにスパイを描こうとも、彼らが日陰の存在で、誰にも正体がバレてはならないというその職業の”本質”を守らなければならない。むしろ、その”本質”をきっちり守るからこそ、パロディカルやコミカルな設定が存分に活きるのだ。

 

  • つまり総括すると、

「ゆうにことかいて『SPY×FAMILY』をコピーしているくせに、こんな底の浅いスパイ設定はないだろう」

ということになる。

 

  • 以上、ここまでが「スパイ」という職業設定のツッコミどころである。

 

  • 次は、内容の話をしていこう。ことのあらまし的には、こうだ。

ヒロインの夜桜六美(よざくらむつみ)を妹に持つ長兄・夜桜凶一郎が、クレイジーサイコなレベルで妹への保護欲を爆発させている。

②凶一郎は夜桜家のなかでもめちゃくちゃ強い誰も勝てない

③そんな凶一郎は、主人公の「朝野太陽(あさのたいよう)」の命をとろうとしている

④なぜかというと、太陽はヒロインの六美と幼馴染だから。妹への保護欲が暴走してしまった凶一郎は、ついに幼馴染である太陽をターゲットにし始めた。

⑤命からがら六美の兄妹に助けられた太陽。兄妹たちは長兄・凶一郎の暴走から太陽を守ると言ってくれたが、そもそも勝ち目は薄かった。

もっとも助かりそうな方法として、「六美と結婚する」ことを提案される太陽。どうやら、”家族”には手を出してはいけないという家訓を盾にして凶一郎が手を出すのをやめさせる作戦らしい。

⑦クレイジーな凶一郎の魔の手から幼馴染を救うため、太陽は覚悟をきめて結婚する。

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  • テーマは「家族」。主人公の太陽は、かつて事故で家族を亡くし、大切な人を失うことを恐れているところから物語は始まる。
  • そしてふたたび、凶一郎たちの関わりのなかで、幼馴染の六美を守るため「家族」になることを決心するのが結びとなる。
  • こうした変化を描けているのはいいと思うのだが、ここに至るまでの展開が芳しくなかった

 

  • 兄妹が束になってかかっても、戦闘では凶一郎に適わない。それはすでに自明のことだった。
  • だから姉の「二刃(ふたば)」が太陽に「結婚作戦」を提案するわけだが、なんとそれを六美が否定する。
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  • いわく、「家族を喪った痛みに苦しんでいる太陽と”家族になれ”だなんて酷だ」ということらしい。
  • 言いたいことはわからなくはないが、そのセリフは説明じみているだけでなく、そもそも展開の流れから考えて不自然である。
  • よく考えてみてくれ、六美さん。

①凶一郎には勝てない可能性がきわめて高い

②このままでは太陽が殺される

③少々強引だが、六美と結婚して「家族(身内)を殺してはいけない」という家訓を盾に生き延びるしかない

いま太陽が置かれているのは、こんな状況なのだ。

  • にもかかわらず、「家族を喪った痛みに苦しんでいる太陽と”家族になれ”だなんて酷だ」なんてセリフは、あまりにピントがズレすぎではないか。
  • いま、そんなことを言っている状況ではないだろう。
  • わたしがもしも太陽なら、「じゃあどーすんだよ!おれ死んじゃうよ!!」と悲痛な叫びをあげるだろう。

 

  • こうして総合的にみても、内容的にもお粗末な仕上がりになってしまっていると言わざるを得ない。。
  • クレイジーサイコな凶一郎はいいキャラをしているかもしれないが(使っている武器も『ヘルシング』のウォルターみたいなやつで好き)、太陽と六美が「結婚する」というこの作品の大事なイベントをブラッシュアップできていなかったのは痛いところではある。

 

 

(第2話に続く……)



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石山 広尚(いしやま ひろなお) 1991年うまれ。 札幌在住のライター。 一時期は社会学の研究者を志していたが、ひょんなことから友人と同人誌をつくることになり、それがきっかけで「創作」の世界にどっぷりハマる。小説サークルを主宰し、「批評」の重要性を痛感する。 ・大学院時代の専門:思想史と社会学 ・好きな作家:H.G.ウェルズ、オー・ヘンリー、ポール・ギャリコ、スティーブン・キング ・好きな映画:ゴッドファーザー、第三の男、ターミネーター2