【ネタバレ漫画批評】『サムライ8 八丸伝』第15話【愛する者の死=別れ=旅立ち=王道】

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今日の名フレーズ

〈脚本家は石頭で頑固者だ〉なんて何度もからかってきたけど、本音はもっとそうあってほしい。何をするにしても、頑固であってほしい。業界のお偉方はいろんなものを奪おうとする。君の書いた脚本を買いもするが、君をいきなりクビにしたりもする。買い取った脚本を、原形をとどめないほどに書き変えることもある。けれど、何があっても立ち上がり、もう一度ヒット――以前よりも素晴らしいヒット――を打つ君の能力だけは、彼らにだって奪えないのだ。

(『SAVE THE CATの法則』ブレイク・スナイダー/訳:菊池淳子)

第15話「八丸の義」

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レビュー:70

原作:岸本斉史

作画:大久保彰

所収:週刊少年ジャンプ/2019/39号

『サムライ8 八丸伝』まとめ(第1話~)

なんかいいよね

愛する者の死=別れ=旅立ち=王道

 

  • 主人公が成長するタイミングにはいろいろある。
  • そのなかでも「愛する者の死」(悲しい別れ)は、冒険譚には絶対に欠かせない要素である。
  • 大切な人を失って人は強くなる――古今東西、あらゆる物語は「悲しい別れ」を利用して主人公の成長を描いてきたのだ。

 

  • 「愛する者の死」は誰もが避けたいと願う「悲しい別れ」である。
  • しかし「愛する者の死」は、同時にまた、「旅立ち」のメタファー(隠喩)でもある。
  • 「旅立ち」とは、これまでの環境や価値観を脱ぎ捨て、新しい世界へ足を踏み入れることを意味している。
  • 以前わたしは、記事『悲しみと喜びは表裏一体!?「別れ」と「旅立ち」の美学!』にてこんなことを書いた。

「別れ」は悲しい出来事。それは間違いありません。

けれど、もしもほんとうに「別れ=悲しい」という結論だけで終わってしまうのなら、わたしたちは「別れ」からなにも学びとることができず、人生そのものが薄っぺらいものになってしまいます。

大切なのは、「別れは悲しいけれど……」という考え方です。

この「……」のうしろに来る前向きな意味を物語を通じて描かなければならないのです。

そうすることで作者は、悲しみという「素朴な感情」(低次の感情)をこえて、さらに「高次の感情」へと観客を誘うのです。

「高次の感情」というのは、たとえば、悲しい出来事のはずなのに、そこから前向きな結論を導き出してしまう心の動きのことをいうのです。

つまりより豊かで複雑な感動というのは、悲しみのさらに「向こう側」にあるといえるのです。

 

  • 主人公は、幸福で平坦な道のりでなく、たくさんの出会いと別れの続くデコボコ道を歩まなければならない。
  • これは冒険譚の鉄則であり、王道である。というよりむしろ、それ以外に道はないとすら言えるだろう。

 

  • その意味では八丸も、父の死を経験することで一皮むけたのではないだろうか。
  • 「父の死」と「八丸の旅立ち」がしっかりとリンクしており、王道のツボが抑えられている。

 

  • 今回のエピソードで描かれる八丸は、やけに大人びていることは見逃せない。その顔つきはまさに、使命と義務を自覚した”戦士”である。
  • ”無邪気な子供”の部分を強調するあまり、これまでの八丸はいささか幼稚すぎる感が否めず、わたしは個人的に好きになれなかった。
  • だが現在の八丸をみるかぎり、かなり評価が変わっていきそうだ。

 

  • ……とはいえ、この物語が直面している設定上の問題は依然として横たわったままである。
  • 今回、ようやくダルマ師匠が八丸に「現在の状況」を説明することになる。ふつうはこれを第1話~第3話の段階でやるべきなのだが、これに関してはいまさらツッコんでも仕方あるまい。
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この「カーラ」が諸悪の根源らしい。第1話からさんざん引っ張られてしまったわけだが……何度も言うけど、これをもったいぶる必要がまったくないのだ。けっきょく、「ラスボス」の存在が曖昧なまま10話以上もエピソードを費やしたことになる。

サムライ8 八丸伝 最新話 ネタバレ 感想 第15話 評価 批評 レビュー 面白い 面白くない カーラ アタ サムライ8 八丸伝 最新話 ネタバレ 感想 第15話 評価 批評 レビュー 面白い 面白くない 八丸 鍵
  • この物語の置かれている状況は、前回のわたしの記事(第14話【八丸はヒロインだった!?】)で整理した内容とほぼソックリそのままなので、詳しく知りたければ参照していただければ幸いである。
  • 今回のエピソードでは、わたしが前回指摘した「八丸=ヒロイン」説がより強固になってしまったと言わざるを得ないだろう。

 

  • 本編が抱える問題。それは、

ダルマ師匠=ヒーロー

八丸=ヒロイン

アン=空気

ということだ。

 

  • ようするに八丸は、とても最前線で戦っていいような存在ではないのだ。
  • なぜなら八丸が死んでしまったりアタの手に落ちてしまうようなことがあると、実質的にゲームオーバー(敗北)だからである。
  • 本来ならば、パーティが戦っているのを馬車の中から見守るくらいでなければならないはずだ。
  • まさに彼は「護られるべき側」であり、正真正銘のヒロインである。

 

  • せっかく八丸が凛々しい戦士然とした顔つきやふるまいになってきたのに、これではさすがに気の毒とし言いようがない。
  • そしてそれだけではない。八丸が「護られるべき側」にある以上、ヒロイン役に見事あぶれてしまったアンの存在意義も危ぶまれている。
  • 【アタVSダルマ師匠勢力】の枠組みのなかでは、アンにはまったく居場所がないのだ。彼女がいてもいなくても物語が成立するとさえ言えるだろう。
  • 今後、無理やりアンを物語に絡ませる展開はおそらくあるだろうが、物語上の意義はきわめて低いように思われる。

 

  • 八丸が戦うということ。
  • そこには、割れたらすぐ死んでしまうハンプティダンプティに剣を持たせるような不毛さがある。
  • ともあれ、いったん動き出した時計の針は戻ることができない。
  • この物語がプロットを練る段階まで巻き戻せない以上は、このまま突っ走っていくしかないだろう。

 

 

(第16話に続く……)



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石山 広尚(いしやま ひろなお) 1991年うまれ。 札幌在住のライター。 一時期は社会学の研究者を志していたが、ひょんなことから友人と同人誌をつくることになり、それがきっかけで「創作」の世界にどっぷりハマる。小説サークルを主宰し、「批評」の重要性を痛感する。 ・大学院時代の専門:思想史と社会学 ・好きな作家:H.G.ウェルズ、オー・ヘンリー、ポール・ギャリコ、スティーブン・キング ・好きな映画:ゴッドファーザー、第三の男、ターミネーター2