【ネタバレ漫画批評】『サムライ8 八丸伝』第11話【物語へ没入する前に生じる「ハテナ(?)」】

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今日の名フレーズ

動機はあくまでも原始的でなければいけない。主人公の望みは何なのか?仮に〈職場での昇進〉だとしたら、その根底にある動機は何か? 昇進して好きな娘と結婚したい、もしくはかわいい一人娘の手術代を稼ぎたい……。そういう原始的な動機が根底になければならない。どうして? なぜって、人間は本能的で原始的なものに心を動かされるからだ。生き延びること、飢えに打ち勝つこと、セックスをすること、愛する者を守ること、死の恐怖に打ち勝つこと―ーこうした根本的な欲求には、万人の心をつかむ力がある。だから主人公の動機や、映画のアイデアの根幹には必ず原始的なものが必要なのだ。ベーシック、あくまでベーシックであるべきだ!

(『SAVE THE CATの法則』ブレイク・スナイダー/訳:菊池淳子)

第11話「ふざけたマネを」

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レビュー:40

原作:岸本斉史

作画:大久保彰

所収:週刊少年ジャンプ/2019/34

『サムライ8 八丸伝』まとめ(第1話~)

なんかいいよね

第11話のポイント

 

  • 喫茶店でコーヒーを飲んでいると、後ろの席にいる客同士の会話につい聞き耳を立ててしまうことがある。
  • 多少なりとも後ろめたさをおぼえるが、聞こえてくるものは仕方ない。耳をふさいでコーヒーを飲むのもどうかしている。
  • そうとなれば、いっそ堂々と聞いてしまえばいい。わたしはいつもそう開き直っている。
  • もし聞かれたくないなら、はじめから喉のツマミをしぼってささやくように会話するべきなのだ。

 

  • 顔も名前も知らない人たちの会話は、ときに思わぬ創作ネタを提供してくれることもある。
  • 事実、脚本家や作家のなかには、偶然にも我が耳の拾い上げた他人の興味深い会話の断片から物語の着想を得ている者がある。
  • 創作に携わっている人間は、ぜひとも「他人の会話」に耳を傾けてみるといいだろう。

 

  • しかし残念ながら、なかなか会話の文脈(背景)が読み取れず、いまひとつ面白味に欠けることもある。
  • 退屈な会話の典型は、たとえば「状況はよくわからんけど言い争っていることだけはわかる」といったシチュエーションだ。

 

  • なぜ退屈をおぼえるのか?
  • それは、「対立していることは理解できるが、対立する理由に自分自身が没入できない」からだ。
  • その没入を妨げているのは、用語や背景のよくわからない会話の応酬が繰り返されているためである。

 

  • もしも対立の内容が、「A男とB男がC子をめぐってケンカしている」といったように、非常にシンプルな図式をベースにしているなら、不思議なもので、まったく赤の他人の会話でも興味をそそらずにはいられなくなる。さりげないことではあるが、これは、創作理論とも深く関わる極めて重要な観点だ。「物語の構造(状況)がシンプルであればあるほど観客の理解や共感性を得られやすい」と言われるのはそのためなのである。
  • しかしその一方で、『サムライ8八丸伝』の第11話で繰り広げられている対立のシチュエーションは、まさに「対立していることは理解できるが、対立する理由に自分自身が没入できない」の典型だった。
  • というのも、今回のエピソードのなかで、またしても没入感を妨げうる雑多な情報(ノイズ)がたくさん入り混じっていたのだ。

 

①アタは主人公の八丸をなぜか「八角」と言ってはばからない(理由は相変わらずサッパリ)

②アタはもともとダルマ師匠の一番弟子

③アタは「バク姫の件では失礼しました」と急にダルマ師匠に非礼をわびる(なんのことだかサッパリ)

④アタは「これも我々の計画のため」と八丸をどこかに連行しようとする

⑤その計画とは「崩れた銀河を本来ある姿へと変える」こと

⑥一方でアタは八丸の父とも知り合い(具体的な関係性はサッパリ)

⑦侍は「武神」に見放されたら終わり(よく意味がわからない。比喩なのか? それとも事実なのか?)

⑧「今の八丸がアタにやられたら間違いなく武神に見放される!」と八丸の父が焦り出す(余計に困惑)

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  • サッと取り上げただけでもこれである。情報が多すぎる
  • しかも、それら情報のほとんどが、「?」と首をかしげたくなるような判然としないものばかり。そのせいで、この物語の世界から気持ちがどんどん遠ざかる。
  • ようするに、「わくわく」とか「どきどき」を感じるよりもまえに、「?」が先行してしまうのである。だから没入感が生じにくいのだ。

 

  • もしも、この物語が初期のエピソードの段階で、「八丸は悪い奴らに狙われる存在」という情報を事前に開示してさえいれば、いまよりもいくらかマシになっただろう。
  • 「八丸は悪い奴らに狙われるほどの重要な人物であり、それにはかくかくしかじかの理由がある」ということがあらかじめわかっていれば、アタのような連中が実際に襲ってきても、すんなりとその状況を受け入れられたはずだ。
  • 以前から折に触れて言及しているが、この「八丸」という主人公、この物語のなかでどのような目的を持ち、それを達成するためにどのような行動を起こすのかよくわからないのだ。それがすべての問題だとも言える。

 

  • ナルトは忍者になるため(目的)、アカデミーで日々訓練している(手段)。
  • ルフィは海賊王になるため(目的)、冒険をしている(手段)。
  • ルーク・スカイウォーカーは帝国の支配から銀河を救うため(目的)、ジェダイの騎士として戦う(手段)。

 

  • 主人公には、「目的」と「手段(目的を達成するための方法)」が必要不可欠である。
  • では、八丸はどうだろうか?
  • 八丸は……「武神 流星の不動明王」にようになりたいと言っている。「武神 流星の不動明王」が憧れの侍であることはわかるが、では、果たして八丸は、どのようにして「そうなっていく」つもりなのだろうか? なにをもって憧れの「武神 流星の不動明王」に近づいたと言えるようになるのか?

 

  • このへんのところを突っ込むと、やはりわからなくなってくる。
  • 夢をもつのは人の勝手である。しかし物語では、主人公が胸に抱くその「夢」を観客に理解してもらわなければ意味がないのである。

 

  • この作品、物語に没入するよりも前に「?」が生じる場面が多いように思う。
  • しかもこれは、悪い意味での「?」である。「謎めきを感じる」ときに頭に浮かぶそれではなく、理解できずに思考が立ち止まるという意味での「?」である。
  • いかに「?」を与えずに、スムーズな展開を運びをするか。これは物語の大切な要素である。

 

(第12話に続く……)



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石山 広尚(いしやま ひろなお) 1991年うまれ。 札幌在住のライター。 一時期は社会学の研究者を志していたが、ひょんなことから友人と同人誌をつくることになり、それがきっかけで「創作」の世界にどっぷりハマる。小説サークルを主宰し、「批評」の重要性を痛感する。 ・大学院時代の専門:思想史と社会学 ・好きな作家:H.G.ウェルズ、オー・ヘンリー、ポール・ギャリコ、スティーブン・キング ・好きな映画:ゴッドファーザー、第三の男、ターミネーター2