【ネタバレ漫画批評】『サムライ8 八丸伝』第10話【キャラクターと観客の感情一致=没入感】

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今日の名フレーズ

わたしたちの時代には、人間は苦痛によってきたえられているが、未来の人間は、きたえられるのをきらい、苦痛そのものをなくしてしまったのだ!

(『タイムマシン』H.G.ウェルズ/訳:高田 勲)

第10話「ターゲット補足」

サムライ8八丸伝 最新話 ネタバレ 感想 第10話 批評 評価 レビュー 面白い 面白くない アタ

レビュー:50

原作:岸本斉史

作画:大久保彰

所収:週刊少年ジャンプ/2019/33

『サムライ8 八丸伝』まとめ(第1話~)

なんかいいよね

第10話のポイント

 

論点のズレたオヤジが久々に登場。

・どうやら八丸の星に急接近する謎の敵「アタ」は、そんな空気の読めないオヤジと因縁があるらしい。

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「お前は守られる側の人間だ」と相変わらず不可解な発言が気になる。八丸をサムライにしなければ星が滅亡するというダルマ師匠の話、この人はちゃんと聞いていたのだろうか?

 

・さて、「アタ」はいったい何者なのか?

・なにを目的にした敵なのか?

サムライ8 八丸伝 最新話 感想 ネタバレ 第9話 批評 レビュー 評価 面白い 面白くない アタ 敵

前回の9話より。

 

・それがいまだにわからないでいる。「アタ」が登場してから、かれこれ3話が経過しているというのに。

「八角」と呼ばれるものを探しているようだが、「八角」がなにを意味する言葉なのかも説明されていない。

 

・「アタ」の正体や、その目的の説明がないのはなぜか?

・考えるまでもなく、わざと説明不足状態を引っ張ることで、観客の関心や注意を喚起したいのだろう。

・だがそれは、あまり好ましくない「引き」の演出である。

 

「説明不足のために新しい情報を欲する」ということと、「次回がどうなるのか続きが気になる」ことは、まったく意味が異なるのだ。

・わたしはアタが出てくるたび、「で、コイツって何者なの?」という疑問が頭をもたげ、フラストレーションが溜まってしまう。

 

・もちろん、作中での立ち位置的に、アタが「敵」であることは、小学生でも理解できる。

・だが、そいつが「どんな敵であるのか」すなわち「なにを目的にして敵意をむき出しにするのか」については、判然としない。

・いまいち具体性のイメージを描けない「敵」を見せつけれても、どんな気持ちで受け止めればいいのか、モヤモヤしてしまうのだ。

 

・たとえば、ドラゴンボールのサイヤ人編では、ベジータやナッパ「どんな敵なのか」ということが、サッと見ただけでも、だいたい察することができるようになっている。

 

・つまりベジータとナッパが、惑星の「侵略者」であることが理解できるのだ。

・だから、どんな観客でも、ベジータたちをみて「このままではコイツらに地球が滅ぼされるんじゃないか」という「危惧」「不安」を抱くことができ、劇中の登場キャラクターたちと観客のそれぞれが抱く感情(脅威・恐れ)が、バッチリとリンクする。

・大切なのは、作品内の登場人物たちの感情と、作品をみている観客が抱く感情とが、しっかりと一致していることだ。

 

・だから、作品に登場する「敵」の「脅威」とか「恐れ」とか「ヤバさ」もまた、作中の人物と観客がリンクする必要がある。

・リンクするには、「敵」が「誰にでも理解できる脅威」が備わっていなければならない。

・その一例として挙げられるのが、今まさにベジータとナッパを引き合いにした、「侵略者」というワードである。

 

・「侵略者」は、どんな時代や世界観でも普遍的に通用する概念だ。

・自宅の畑、国家の領土、人間関係――既存の秩序(平穏)を壊して支配を企てる存在の脅威。

・それはたとえ架空の世界の出来事でも、まったく通用する。

 

・星々を襲って渡り歩くクレイジーなサイヤ人たち。劇中で地球人たちは、彼らを心から恐れる。そしてそれをみる観客もまた、ベジータたちを恐れるわけだ。当然、クリリンがナッパを前にしてビビると、観客もやはりビビる

・そしてこのときはじめて、「物語の没入」が相成る。

 

・そう、物語の登場人物と、物語の観客との「感情」が一致するとき、はじめて物語への没入が成立するのである。

・これはきわめて重要な観点だ。

 

・ようするに「敵」は、観客を物語に引き留めて没入させるために欠かせない名役者なのである。そして、そうならなければならない。

敵の魅力(恐れや脅威)は、そのまま物語の魅力と直結していると言っても過言ではない。

・「敵」は作品の生命線なのだ。

 

・しかし一方で、『サムライ8八丸伝』に登場する「アタ」はどうだろうか。

・「アタ」は、八丸の父がビビっているので、「どうやらヤバイらしい」ということはなんとなく察しはつく。

・だが、先ほども言ったように、「アタ」のなにがそんなにヤバイのかは、観客にはわからない

・だから、八丸の父の感情と、それを見せられている観客の感情とのあいだには、かなりのギャップがあると言わざるをえない。これでは、「物語の没入感」が生じにくいのである。

 

(第11話に続く……



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石山 広尚(いしやま ひろなお) 1991年うまれ。 札幌在住のライター。 一時期は社会学の研究者を志していたが、ひょんなことから友人と同人誌をつくることになり、それがきっかけで「創作」の世界にどっぷりハマる。小説サークルを主宰し、「批評」の重要性を痛感する。 ・大学院時代の専門:思想史と社会学 ・好きな作家:H.G.ウェルズ、オー・ヘンリー、ポール・ギャリコ、スティーブン・キング ・好きな映画:ゴッドファーザー、第三の男、ターミネーター2