【ネタバレ漫画批評】『ビーストチルドレン』第1話【主人公の周囲の人間も含めて「成長」を描こうとする作風に期待】

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第1話「泥に笑えば」

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レビュー:80

漫画:寺坂研人

所収:週刊少年ジャンプ/2019/26

『ビーストチルドレン』記事まとめ

第1話のポイント

 

・全体的に粗削りだが、可能性を感じる。

・というのも、主人公だけでなく、周囲の人間の「成長」を描こうとする意図が伝わってきたからである。

・個人的に、かなり好感が持てる。

 

・たとえば主人公の友人「空(そら)」は、物事に夢中になって打ち込めることができない人間である。サッカー部に所属してはいるが、2年になってもいまだ補欠。しかしだからといって、必死にレギュラーを目指そうという気概もない。本人は飄々とした態度をとっているが、じつはそんな今の自分に不満を抱いている。そして主人公「桜」は、一緒にラグビーをする仲間もいないのに、夢中でのめりこんでいる。その姿をみて、「空」は心の中では羨ましいと思っている

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・そして「空」はある日、いつものようにヤル気ゼロの部活のランニングをしている最中、偶然にも、泥だらけになってラグビーの上手な「ユキト」にタックルを仕掛けようとする「桜」を目撃する。興味本位で観察していると、相手に一度たりとも触れることのできなかった「桜」が、運よく「ユキト」へのタックルに成功したのだった。その姿をみた「空」は、”物事に夢中なれなかった自分”に対する複雑な心境が「桜」を通じて爆発し、思わず感極まってしまうのだった。

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・第1話のラストに「空」が”涙する”シーン。それはけっして安っぽい涙ではない。その背景には、しっかりとした「文脈」がある。「空」の「感情(心境)の変化」の先に「涙」があるわけである。しかも主人公は「空」の涙の意味をけっして知らない。それもまた、ニクイ演出である。

夢中になれる主人公「桜」と、夢中になれない男「空」。この対比がよく描けている。

 

・そしてもう一人の主要キャラクター、「ユキト」。彼は、主人公の「桜」が尊敬するプロのラガーマン「一樹雄虎(いつきおのとら)」を父に持つ。だが、すでに「一樹雄虎」はこの世にいない。ラグビー一筋人生の男は、どうやらフィールドで亡くなったらしい。この死に対して、「ユキト」はやりきれない思いを抱いており、父の生き様を肯定(受容)しようとしなかった

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ここはけっこうツッコミポイントだった。主人公「桜」と「一樹雄虎」の絡みがちょっと強引すぎたかもしれない。「桜が試合観戦中に観客席から落っこちた」という状況設定なんてしなくても、「一樹雄虎」との関わりをちがうカタチで描けたと思うが……。

・ところが皮肉なことに、あるときユキトは、認めたくない父に触発された”ラグビーバカ”と出会ってしまう。それが主人公の「桜」である。つまり「桜」は、ユキトが否定したかったはずの「亡き父の生き様」を肯定する存在として描かれているのである。当然、息子のユキトは、そんな父の”スピリット(精神性)”を受け継いでいる「桜」を認めるはずもなかった。そこでユキトは、ド素人の「桜」に「タックル勝負」を挑む。彼は、父をリスペクトする「桜」をラグビーで打ちのめすことで、「父の生き様を肯定したくない自分自身」を救おうとしたのである。

・実力的には、がぜんユキトが上手だった。まっとうに勝負しても、「桜」に勝ち目など鼻からなかった。だが、偶然にも、ぬかるみに足をとられ、ユキトは最後の最後に渾身のタックルを浴びせられてしまう。事実上、格下の「桜」の勝利で幕引きとなってしまった。

・そしてユキトは、ふだんの冷静沈着な性格には似合わず、今回の勝負のことで心から悔しむことになる。その悔しさは、「泥にぬかるんで運悪く負けてしまった」ことに向けられているのではないことは明らかであった。その感情は、「生前の父」への思いとツイストした複雑なものだったのだろう。

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このシーン、思いがけずグッときてしまった。いい演出である。「くそっ」という短いセリフに、ユキトの複雑な心境が凝集されている。

生前の父を尊敬する主人公「桜」と、生前の父を尊敬したくない「ユキト」。これもまた、うまく対照的に描かれている。

 

・このように、この作品は、主人公を中心軸にしながら、周囲の人間の「成長」や「変化」を描こうとする意志が明確にある。

主人公は、自分自身が成長するだけでなく、他人に影響を与える存在でなければならない。この古典的ともいえる創作の基本を、ガッチリと抑えているのだ。

・たしかに全体的には粗削りかもしれないが(ツッコミどころはあった)、しかし「基本」を守れば、読者の心を動かすことはできるのである。この第1話では、思いがけず、そのことを再確認させられた。

・個人的に応援したい作品である。

 

(第2話に続く……)

 

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石山 広尚(いしやま ひろなお) 1991年うまれ。 札幌在住のライター。 一時期は社会学の研究者を志していたが、ひょんなことから友人と同人誌をつくることになり、それがきっかけで「創作」の世界にどっぷりハマる。小説サークルを主宰し、「批評」の重要性を痛感する。 ・大学院時代の専門:思想史と社会学 ・好きな作家:H.G.ウェルズ、オー・ヘンリー、ポール・ギャリコ、スティーブン・キング ・好きな映画:ゴッドファーザー、第三の男、ターミネーター2